固定資産の管理機能が使用に耐えない
月次償却ができない
固定資産の月次償却ができず、月次決算の障害となります。年額一括の計上しかできません。さらに、償却資産税の申告書や別表十六の出力もできません。
「マネーフォワード固定資産」のリリースによって解決されましたが価格が高いです。一般的な中小企業が導入できる価格帯ではありません。
最低限の損益管理をしようとすると別に固定資産管理ソフトが必要
そのため、現実的には「減価償却の達人」等の固定資産管理ソフトを別途導入する必要があると感じられます。マネーフォワードは税務申告ソフトを開発しておらず、NTTデータの達人シリーズとの連携を進める方針のようです。
固定資産を取得したら減価償却の達人に入力し、月次償却額の合計値を会計データに転記する方法で月次決算を組めば、達人から償却資産税申告書も別表十六も出てきます。
しかし、達人シリーズとの連携を進めているのに、何故か「減価償却の達人」とだけは連携していません。つまり、達人で算出した月次の減価償却費をマネーフォワード会計に手入力する必要があります。
POSレジの同期機能が使いづらい
同期されてくるデータが細かすぎる
飲食店舗を多数保有している企業で、POSレジのAPI連携機能を導入しようとしたことがあります。
レジで決済されるごとに仕訳が生成され、少し細かすぎる気がいたしますが、そこは大した問題ではありません。他のベンダーも同様の仕様です。しかし、同期させるPOSレジごとに部門情報等の設定ができると思っていたのですが、できない点は残念でした。
POSレジごとに部門情報の設定ができない
飲食店において店舗損益の把握は必須事項なので売上高に係る仕訳に部門情報を付さない訳にはいきません。決済されるごとに同期されてくる仕訳に、手作業で部門情報を付けていくしかないとのことでした。
膨大な時間がかかり、「従来通りPOSレジからCSVエクスポートした方が早いのではないか。」となってしまいました。POSレジを設置する場合で、部門情報が不要なケースはあまり考えられないため、レジのAPI連携機能の存在意義自体に疑義が付いてしまいました。
インターフェイスが洗礼されていない
証憑を見ながら入力するのがほとんど不可能
スマホでレシートを撮影し経費申請を行う仕組みは一般的になってきましたし、請求書をまずスキャンして電子化し、スキャンデータを閲覧しながら仕訳入力を行う仕組みも多いです。
マネーフォワードでは、画像データと入力欄が上下に分かれており、証憑の可読範囲が極端に狭いです。レシートや請求書は縦長のものが多いので、実務上は別画面でPDFファイルとして開く必要があります。
クラウド会計ソフトでは後塵を拝している弥生会計がデュアルディスプレイに対応しており、別ウィンドウで証憑が表示される仕様なので見やすいと感じました。freeeは、別ウィンドウで表示はできませんが、証憑と入力欄が左右に表示されるため、マネーフォワードよりかは見やすいです。
リロードしないと更新されない
推移表や総勘定元帳を閲覧し、数字と数字の整合性を確認しながら仕訳を切っていくことが多いのですが、推移表の数字がリロードしないと更新されません。
そして、リロードすると表示位置が初期位置に戻ってしまうため非常に面倒です。freeeとの比較になってしまいますが、freeeはリロードしなくても一定時間の経過で更新されます。
データの加工・分析がしづらい
通常のプランだと「取引先」がないため連結決算が組めない
補助科目という概念しか通常のプランだとありません。そうすると、必ずしも補助科目に取引先を入力するとは限りませんから、連結財務諸表を作成する際に困ります。グループ間取引を網羅的に抽出する必要があるためです。
マネーフォワード会計plusだと取引先の入力欄がありますが、上場企業か上場準備企業向けになっております。
CSVエクスポートの形式を選択できない
会計ソフトからデータをエクスポートする際、形式をカスタマイズすることができず、デフォルトのエクスポート形式がリレーショナルデータベースの形式になっていません。
上記のように、勘定科目、補助科目が1列ズレた形式でしか出力できないのです。
このような形式は人間にとって非常に見やすいという利点がありますが、加工・集計するには適しておりません。同じ列に異なる性質のフィールドが書き込まれてしまっていることや、補助科目と紐づく勘定科目名が同一の行に記載されていないことが原因です。
例えば、A社に対する売掛金を集計しようとした際、VLOOKUPでもSUMIFでも数値を引っ張るのが困難です。よって、最終的な成果物に対してこのような形式を使用することはあっても、エクスポートされる元ファイルが当該形式では実務遂行の障害になり得ます。
よく比較されるfreeeではcsvエクスポートする形式を選ぶことができます。
開発方針の迷走
支払機能が複数に分離
マネーフォワード会計に債務管理機能があり、マネーフォワード経費にも従業員立替経費の精算機能、請求書払いの支払依頼機能ががあるなど、ERPとして包括的なデザインがされておらず、別々に開発された機能を事後的に紐づけているという印象を受けます。
さらに、「マネーフォワード債務支払」が別途リリースされ、正直迷走している印象は受けてしまいます。恐らく従業員立替払払は「マネーフォワード経費」、請求書払は「マネーフォワード債務支払」に集約・整理しようとしているのだと思われますが細かく分け出過ぎです。
いくらリーダブルにコードを記述しても、他のエンジニアが記述した機能を改修するのは容易ではありませんので、どんどん機能が分離してしまうことは珍しくはないのですが、適時の統合が上手くいっていないように見受けられ、プロダクトとしての分かりやすさを阻害していると感じます。
機能を細かく分けすぎている
給与関連の機能は、「マネーフォワード給与」「マネーフォワード年末調整」「マネーフォワード社会保険料」の3つに分かれており、それぞれ独立したデータベースを保有している挙動を見せております。
給与計算、年末調整、社会保険料手続は、ほぼ同一の情報を用いて行う一体不可分の処理になりますので、ここまで細かく分ける必要性に苦しみますし、情報連携が1クリックで出来るとは言え、逆に言えば都度クリックしないといけないのも事実です。
データベースが異なると言うことは、情報の連携は原則的には監査要点となってしまいます。自動統制として処理できるとは言え、煩雑な印象は否めません。
マスタ情報を別々に保有していた
マネーフォワード会計とマネーフォワード経費で別々にマスタ情報を保有していたなど、機能間の情報連携の弱さはところどころで感じられます。
直近の改善により、会計と経費間のマスタ連携はできるようになったようですが、情報の連携が弱いと、会計監査の対応においては工数が増加するため、好ましくないかもしれません。
将来的には寡占的なシェアを獲得すると思われる
上場のタイミングによる開発の遅れ
中小企業向けのクラウド型会計ソフトでは、マネーフォワードとfreeeが支配的な地位を占めております。
freeeの方が早く上場し、豊富な資金を背景にプロダクトの改善を進めたため、一時的に品質に差異が生じていたというのが正直な感想です。
しかし、マネーフォワード社も上場し、急速な品質の改善がなされており差異は縮小してきております。
複式簿記の概念を維持したマネーフォワード社が将来的に有利か?
freeeの最大の失敗は、複式簿記の概念をインターフェイスから取り払ったことです。これは、様々な問題を引き起こしており、メリットよりもデメリットの方が圧倒的に大きいと感じます。
この点、マネーフォワード社は複式簿記の概念を引き続き採用しておりますので、将来的なクラウド会計ソフトのシェアはマネーフォワード社が支配的になるような気がいたします。
昔から長期的に会計ソフトを開発しているベンダーのプロダクトは、オンプレミス型として開発された従来のプロダクトをベースにしているが故の使いづらさが否めません。