税理士はAIで代替されるのか?税理士業務のよくある誤解を解説!

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税理士は30年前から「もうすぐいらなくなる」と言われている

1990年頃 会計ソフトの登場とパーソナルコンピュータの発達

会計ソフトの普及とパーソナルコンピュータの発達により税務に関する業務は大幅に効率化されました。手作業で行っていた業務が会計ソフトにより自動で処理、転記されていく様子は人々に衝撃を与え、「税理士はもうすぐいらなくなる」と言われました。

2013年 有名なオックスフォード大学の研究

オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授とカール・ベネディクト・フレイ博士の「雇用の未来ーコンピューター化によって仕事はどのくらい影響を受けるのか」では、税理士は最も自動化されやすい職種とされ、10年後には高い確率でAIやロボットに代替されるとされました。

2015年頃 クラウド会計とAIの登場

従来、紙の通帳を銀行に持っていき記帳し、入出金情報を通帳から会計ソフトに転記していく作業は大きな負担となっておりました。

そこに、freee会計、マネフォワード会計などのオンラインバンクとのAPI連携機能を備えた会計ソフトが登場し、入出金情報を自動で取得し、さらに摘要から仕訳を推定し、修正履歴を学習して精度を高めていく仕組みができました。

連携できる範囲はオンラインバンクだけでなく、クレジットカード、電子マネーへの広がりを見せ、仕訳の推定、及び学習機能も進化していき、確定申告書は近い将来自動で生成されるようになると言われ、税理士は経営コンサルタントに移行することが強く推奨されました。

2020年頃には、APIリファレンスが一般に開放された会計ソフトも増え、独自のアプリケーションを開発して外部から自動で処理することも可能になりました。

税理士がいらなくなることはなかった

先に述べてきた通り、テクノロジーの進化により単純作業に近い部分は効率化されてきました。単純作業に近い業務は、競争が激しく低価格化が進んでおり、元々税理士にとって所得の源泉になっておりませんでしたので、テクノロジーの進化は煩雑な作業が減少させるという意味で歓迎されました。

周知の通り、テクノロジーの進化により税理士がいらなくなることはありませんでした。

予想が外れ続けるのは税理士業務への誤解が根本にある

税理士は法律家である

税理士の独占業務は、税務代理、税務書類の作成、税務相談で、税理士は税金の計算工程に関する専門家であるということができます。そして、税金の計算ルールは、法人税法、消費税法、所得税法等の法律、及び判例により規定されています。

法律や判例に従って判断するといっても機械的に判断できるものではなく、抽象的な記載から趣旨を理解し、目の前の事案に当てはめることが必要です。

例えば、交際費の損金算入の可否が争われた判例を見てみると、損金への算入に当たり次のような判示がなされております。
「抽象的な必要性だけでは足りない」
「具体的に当該法人の業務と関連性があるものであることを要する」
「個別具体的な取引・契約等の厳密な結び付きが認められない限り、業務との関連性が認められないと解する必要はない。」

単に人脈を広げるという抽象的な必要性があるというだけでは、業務との具体的な関連性があると認めることはできない(中略)

法人の支出した飲食等の代金が交際費等に該当するためには、その支出の目的が一般的・抽象的なものでは足りず、具体的に当該法人の業務と関連性があるものであることを要する(中略)

法人が支出した個別の飲食等に係る接待交際費と、その後相手方との間で行われた個別具体的な取引・契約等の厳密な結び付きが認められない限り、業務との関連性が認められないと解する必要はない。

東京地裁民事3部令和5年5月12日判決

この極めて抽象的なルールを解釈し、目の前の事案に適用して判断するのが、税法に関する法律家たる税理士です。関連論点に関する知見、歴史、実務慣行などの横断的な知見を統合して判断しています。

機械的な作業であるという誤解

税理士の業務は、税務相談に応じ、会計帳簿を作成し、そこから確定申告書を作成することが中心です。そして、作業時間の大半は会計帳簿の作成が占めます。会計帳簿は請求書や領収書などの証憑を根拠に作成されます。

これらを傍から観察すると、単に証憑に記載された数字を一定のルールに従って機械的に会計ソフトに転記し、集計して確定申告書を作成しているという誤解が生じるのも無理はありません。そして、この「税理士業務は機械的な作業である」という誤解が、税理士の将来に関する予想が外れ続けた根源的な理由であると考えられます。

また、税理士業界がこれらの誤解を払拭するための積極的な活動を行ってこなかったことは問題であると感じられます。確定申告支援の説明会等では、傍聴者が非専門家であるため単純化して説明せざるを得ませんが、本来複雑なものを状況に応じて単純化して伝えている旨を付言しないため、自らの活動で誤解を助長させています。

税理士業務はAIやロボットに代替できる性質ではない

AIは目の前の事案に対して判断する能力を持っていない

freee会計、マネフォワード会計の登場は確かに業界に衝撃を与えましたが、実装されているAIはあくまでも過去の情報から正解とされる可能性が高い処理を推定しているにすぎません。

Claude Code、Gemini、Chat gpt等の大規模言語モデルのAIも、確率論から平均的な回答を導いている点は同様で、税理士の業務を代替することは根本的に不可能です。これらが将来税理士の業務を代替する未来はやってくるのかもしれませんが、抽象的なルールを「解釈」し、非言語情報も含めて目の前の具体的事実に落とし込む作業は2026年現在のAIには不可能で、少なくとも近い将来にやってくることはないと考えられます。

企業会計・管理会計との結びつき

中小企業では、会計帳簿の作成に当たり税務以外の論点を気にする機会は稀で、そのため税務の観点を中心に検討してきましたが、会計帳簿は企業会計や管理会計とも深く結びついている点に留意が必要です。

制度会計の趣旨に基づき投資家の意思決定を阻害しないか、企業が抱えている問題を適切に分析できる処理になっているかも同時に検討する必要があります。つまり、実際には税務会計の観点だけではなく、企業会計、及び管理会計の視点からも同時に処理方法を検討する必要があり、前提として利害関係者の関心はどこか、企業が抱えている課題は何か等の極めて人間的な理解が求められます。

大規模言語モデルのAIを会計・税務業務に活用する際の弱点とは

作業工程がブラックボックス

税理士業務を始めとする会計・税務に関する業務を大規模言語モデルのAIを活用して効率化する試みが多くなされています。しかし、作業工程がブラックボックスであるという点は、業務への活用を前提とすると致命的な欠点であるように感じられます。

どのような工程を経て成果物を導いているかが不明なため、1,000回正しく成果物を吐き出したとしても1,001回目に間違える可能性が否定できません。そのため、常に成果物は入念なチェックが必要となってしまいます。

これらは、従来のコードを書いて自動化していく作業とは対照的です。自分でコードを記述すれば、コードの記述に誤りがない限り100%正しい成果物が生成されます。規模が大きくなるほどチェックが不要というメリットは大きく、少なくとも会計・税務という領域において、現時点では大規模言語モデルのAIが活躍できる領域は限定的であるように考えられます。

但し、AIに成果物を作成させるのではなく、人間が作成した成果物をAIがチェックするという用途では有用です。その性質を理解して、適切に使用することが大切です。

知的財産権に関する問題

大規模言語モデルのAIは、インターネット上のコンテンツを無断で読み込んで活用しており、一部訴訟にも発展しております。収益の一部を権利者に還元することで和解を目指しているようですが、知的財産権の観点から問題を有していることは間違いありません。

税理士協会の姿勢はまだ判然としませんが、知的財産権に関する問題が整理されない限り、業務への活用は慎重にならざるを得ない側面も存在します。

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AIknot会計事務所/AIknotコンサルティング合同会社
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監修者

PwCあらた有限責任監査法人の金融部門に所属。保険会社を中心とした会計監査、内部統制監査、各種コンサルティング業務に従事。AI化推進室に兼任で所属し、公認会計士業務の自動化を担当。

セコム損害保険株式会社、THホールディングス株式会社における、保険数理、金融派生商品の評価、予実統制、税務、M&A、企業再生、IPO支援の経験を経て、PEファンドJ-star傘下、株式会社Free Spark、株式会社CyberKnot、Mattrz株式会社のCFOを歴任。

2020年、AIknot会計事務所を設立し代表に就任。
2023年、AIknotコンサルティング合同会社を設立し代表社員に就任。

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