必要な前提知識
分散の性質
$V(X+Y)=V(X)+V(Y)$となるかを考えてみます。
\[V(X+Y)=E(\{(X+Y)-(μx+μy)\}^2) …(1)\]
- E(X)=μx …確率変数Xの平均値
- E(Y)=μy …確率変数Yの平均値
- X,Yは共に独立した確率変数
- Vは分散
- Eは期待値
分散は、確率変数と平均の差の2乗であるため、(1)の式となります。これを展開していきます。
$=E(\{(X-μx)+(Y-μy)\}^2)$
$=E((X-μx)^2)+2E((X-μx)(Y-μy))+E((Y-μy)^2)$
分散の定義より$E((X-μx)^2)=V(X)、E((Y-μy)^2)=V(Y)$なので、
$=V(X)+V(Y)+2E((X-μx)(Y-μy))$
$=V(X)+V(Y)+2E(XY-Xμy-Yμx+μxμy)$
$=V(X)+V(Y)+2(E(XY)-μyE(X)-μxE(Y)μx+μxμy)$
確率変数の期待値は平均値に等しいので、$E(X)=μx、E(Y)=μy$とおき、
$=V(X)+V(Y)+2(E(XY)-μyμx-μxμy+μxμy)$
$=V(X)+V(Y)+2(E(XY)-μxμy)$
$=V(X)+V(Y)+2(E(XY)-E(X)E(Y))$
$E(XY)-E(X)E(Y)$は確率変数が独立(2つの確率変数が無関係に動く)であればゼロになる期待値の性質があるから、
$=V(X)+V(Y)+2\times0$
$=V(X)+V(Y)$
$V(X+Y)=V(X)+V(Y)$となることが分かりました。$ …(2)$
ボラティリティの時間経過による変動
分散の総和を考える
\[V(Sn)=V(X1+X2+X3+X4…Xn)\]
- V(Sn)は分散の総和
- σは標準偏差(ボラティリティ)
(2)より、
$V(Sn)=V(X1+X2+X3+X4…Xn)=V(X1)+V(X2)+V(X3)+V(X4)…V(Xn)$
各分散が同一という前提を置くと、
$V(Sn)=V(X1)+V(X2)+V(X3)+V(X4)…V(Xn)=nV(X)$
標準偏差は分散の平方根をとったものなので、平方根を取ってσを求める。
$σ(Sn)=\sqrt{nV(X)}$
$=σ\times\sqrt{n}$
金融工学の一般的な表記にすると、
$σ(Rt)=σ\times\sqrt{t}$
この式は感覚とも一致します。短期間で株価が大きく変動することは多くありませんが、長い期間で考えられば大きな変動も珍しくありません。
具体的な使用方法
ボラティリティは、一般に「株価の変動率の標準偏差の年率」とされておりますので、月次の株価データから標準偏差を計算した場合、$\sqrt{12}$を掛けてボラティリティを算出します。