結論:あまり変わらないが日本で購入するより安くなる場合もある
事例:ハワイにおけるS社ハンドバッグの購入費用
項目 | 単位:US$ | 備考 |
---|---|---|
本体価格 | 2,790.00 | |
特別調整割引 | -279.00 | 割引理由不明 |
買物袋 | 0.15 | |
小計 | 2,511.15 | |
州税 | 118.33 | ハワイ州税率4.712% |
合計 | 2,629.48 |
例としてS社ハンドバッグで比較してみます。2024年9月現在、ハワイでの小売価格は上記の通りです。
日本で関税と消費税が発生する
税目 | 単位:円 | 備考 |
---|---|---|
関税 | 18,200円 | |
消費税 | 24,400円 |
日本に入国する際、税関で関税と消費税が発生します。
日本円に換算(1$=144.92円)して関税、消費税を合算すると423,664円となりました。日本の小売価格が税込429,000円だったので僅かにハワイの方が安いという結論になりました。根拠不明の割引があるのですが、現地で購入した方が安くなるように調整しているのかもしれません。
海外で購入した方が顕著に有利なケースも想定される
上記事例では、20万円の免税範囲を超過して関税、消費税が発生しておりますし、アメリカ合衆国には日本の消費税に相当する税金の二重課税を排除する措置がないようですので、ハワイ州税と日本の消費税が重複して発生しております。ブランドによっては免税店で州税が発生しない形で購入することができますし、購入する国の税制によっては還付が受けられることもありますが、一般論として海外で購入する顕著なメリットは消失しているように見受けられます。
しかし、現地のVAT等が免税となり、かつ20万円の免税範囲に収まり関税・消費税が発生しないケースでは海外で購入する有意なメリットがありそうです。
関税の具体的計算方法
現地通貨から日本円への換算
課税標準を算出するため日本円に換算する必要がありますが、適用する為替レートは次に示す通りです。
第四条の七 第四条から前条までの規定により課税価格を計算する場合において、外国通貨により表示された価格の本邦通貨への換算は、当該輸入貨物に係る輸入申告の日(関税法第五条第一号(適用法令の特例)に掲げる貨物の課税価格を計算する場合にあつては、同号に定める日)における外国為替相場によるものとする。
関税定率法第4条の7
2 前項の外国為替相場は、財務省令で定める。
(価格の換算に用いる外国為替相場)
関税定率法施行規則第1条
第一条関税定率法(明治四十三年法律第五十四号。以下「法」という。)第四条の七第二項(価格の換算に用いる外国為替相場)に規定する財務省令で定める外国為替相場は、同条第一項に規定する日の属する週の前々週における実勢外国為替相場の当該週間の平均値(当該平均値の算定の基礎とされる実勢外国為替相場が当該前々週にないときは、その週の直前の当該実勢外国為替相場のある週における実勢外国為替相場の当該週間の平均値とする。以下この条において単に「平均値」という。)に基づき税関長が公示する相場とする。ただし、実勢外国為替相場の著しい変動により平均値に基づくことが適当でないと認められる場合は、同項に規定する日の直近の実勢外国為替相場に基づき税関長が公示する相場とする。
換算には申告の日の前々週における週平均のレートを使用します。税関で公示されています。
免税範囲
日本円に換算した金額が免税範囲を超過していると関税・消費税が発生します。ハンドバッグの場合、「その他の品目」に該当するため、免税範囲は20万円です。
個人的に使用する貨物の課税標準
日本円に換算した金額が免税範囲を超過すると関税、及び消費税が発生します。
(航空運送貨物等に係る課税価格の決定の特例)
関税定率法第4条の6より抜粋
第四条の六 (中略)
2 第四条から第四条の四までの規定により課税価格を計算する場合において、当該輸入貨物が、本邦に入国する者により携帯して輸入される貨物その他その輸入取引が小売取引の段階によるものと認められる貨物で、当該貨物の輸入者の個人的な使用に供されると認められるものであるときは、当該輸入貨物の課税価格は、当該貨物の輸入が通常の卸取引の段階でされたとした場合の価格とする。当該輸入貨物が、本邦に居住する者に寄贈される貨物で、当該寄贈を受ける者の個人的な使用に供されると認められるものであるときも、同様とする。
お土産など個人的に使用する貨物の場合、「通常の卸取引の段階でされたとした場合の価格」を使用することができます。
(輸入者等の個人的な使用に供される輸入貨物に係る課税価格の決定の特例) 4 の 6―2
法第4条の6第2項の規定に関する用語の意義及び取扱いについては、次による。
(中略)
(3) 「当該貨物の輸入が通常の卸取引の段階でされたとした場合の価格」とは、本邦の卸売業者が一般的に本邦における再販売等の商業目的のために当該貨物と同種の貨物を当該外国において卸取引の段階で購入するとした場合の価格をいい、「海外小売価格×0.6」により算出するものとする。ただし、金、白金その他の国際相場価格がある物品等であって、通常、卸取引の段階と小売取引の段階において、これらの価格の間に相当の差異がないと認められる物品については、この限りでない。 この場合において「海外小売価格」とは、原則として輸入者が当該貨物を取得する際実際に支払った価格(郵便物にあっては、税関告知書等に記載されている価格)とする。ただし、申告価格又は税関告知書等に記載されている価格が著しく低価である等その真実性に明らかな疑念が持たれる場合又は価格が不明である場合は、類似品の価格、税関が調査した鑑定資料等を参考として、賦課課税方式が適用される貨物にあっては課税価格を決定し、申告納税方式が適用される貨物にあっては修正申告を求め、又は更正をする。
関税定率法基本通達4の6-2
「通常の卸取引の段階でされたとした場合の価格」は、「海外小売価格×0.6」とされています。
関税の税率
ハンドバッグは42類となり、素材、及び現地国との協定により税率が変わります。
関税率 | 備考 | |
---|---|---|
基本税率 | 日本の国会で定めた税率 | |
暫定税率 | その時々の事情で臨時に設定される税率。設定されている場合は優先して適用される。 | |
WTO協定税率 | WTO(世界貿易機関)加盟国からの輸入に対する課税はWTO協定税率を超えることができず、上限として機能する。 | |
特恵税率 | 開発途上国の輸出等を支援する目的で政令で定めた国に適用される税率 | |
特別特恵受益国 | 開発途上国の輸出等を支援する目的で一定の品目が無税となる措置 |
また、ETA/FTA(経済連携協定)に基づく関税率もあります。税率は次のリンク先の通りですが、一般的な革のハンドバックの場合、WTO協定税率の8%になることが多いように見受けられます。
計算例
関税
$2,629.48\ USD×144.92=381,064$ …海外小売価格
$381,064×0.6=228,639$ …関税の課税標準
$228,639×8\%≒18,200$ …百円未満切捨て
消費税
$228,639+18,200≒246,000$ …関税額を加算して消費税の課税標準
$246,000×7.8\%=19,100$ …消費税の国税部分は7.8%
$19,100×22/78≒5,300$ …消費税の地方税部分は2.2%
$19,100+5,300=24,400$ …消費税