freee人事労務の導入を検討する際に注意すべき事項について解説いたします。
中堅企業・大企業だと割高感がある料金体系
計算対象となる従業員数に応じた課金
freee人事労務スタータープランを例にとると、年36,000円(年払い)で5名まで給与計算ができ、6名以降は年7,200円/1名の追加料金となっております(2026年7月現在)。従業員が十数名程度の中小企業でしたら非常にリーズナブルに利用できる印象です。
従業員数が多いと割高感あり
しかし、例えば従業員数が300名在籍している企業ですと年2,160,000円となってしまい同業他社のプロダクトと比較すると割高感が強い印象が否めません。
クラウド型のため、ベンダーがサーバー利用料を負担しており、その負担も従業員数に応じて増加するため、従量課金にすること自体は十分に理解できるのですが、従業員数に応じて比例的に利用料金が増加するのは少々過度な請求のようにも感じられます。
クラウド型の給与計算ソフトであっても、アクセスできるアカウント数に応じた従量課金等、料金体系が異なるプロダクトの場合、より安価に使用できることになります。但し、このような料金体系のプロダクトも、給与明細のオンライン配布等は従業員数に応じた料金体系になっていることも多いです。
社会保険・労働保険の保険料率を1つしか保持できない
適用事業所が複数ある場合は事業所ごとの加入が原則
社会保険(健康保険・厚生年金)は、事業所ごとに適用されるのが原則です。労働保険においても同様です。しかし、freee人事労務では社会保険・労働保険の保険料率を1つしか保持できません。
一括適用の要件を充足して本社で一括管理できる場合にはよいですが、事業の種類が異なる等の理由で事業所ごとに加入する必要がある場合は、給与計算ができません。
適用事業所ごとにプロダクト購入を求められる
1アカウントごとに1つの保険料率しか設定できないため、適用事業所が複数ある場合には事業所の数だけfreee人事労務のアカウントを購入して欲しいというスタンスのようです。
従業員数に応じた料金体系のため料金的には大きなデメリットにはなりませんが、複数のfreee人事労務のアカウントを遷移しながら給与計算を行わなくてはならないのは事務手続きにおける負担となります。基本的にはスモールビジネス向けのプロダクトと考えた方がよいかもしれません。
変則的な手当があるとアドバンスプランが必要
「カスタム項目を用いた変動手当」はスタンダードから
手当は固定的な金額を支給する性質のものばかりではなく、事前に合意した計算式により算出された金額を手当として支給する場合も珍しくありません。
freee人事労務では、スタンダードプランから「カスタム項目を用いた変動手当」を利用できますが、1項目のみの利用しかできません。
複雑な計算式が必要となる場合はアドバンスプランが必要
複雑な計算式が必要となる場合にはアドバンスプランが必要となります。アドバンスプランは、年13,200円/1名がベースの料金となりますので、従業員数が多い場合にはかなり高額になってしまいます。
それでも、中堅・大企業向けの給与計算ソフトと比較すると、計算の自由度は高いとは言えません。但し、エクセルで手当を計算し、計算後の金額を支給手当として一括インポートすることは安価なプランでも可能です。
社会保険手続きの機能は不足気味
従業員情報の収集機能は非常に便利
freee「人事労務」を謳っているだけあり、給与計算機能だけではなく人事労務の機能も一定程度付随しております。例えば、従業員を新たに雇用する際、freee人事労務から従業員に招待メールを送り、住所、氏名、交通費、マイナンバー等の情報を入力させることができます。
人事労務ソフトを別途使用していない場合は紙ベースでの収集となってしまうため非常に便利です。
社会保険手続きの対応帳票はかなり限定的
従業員から収集した情報に基づき、被保険者資格取得届等が生成できるなど一定の社会保険手続きがfreee人事労務上で実施可能です。しかし、対応している帳票は非常に限定的で、結局他のシステムが必要となってしまうため存在意義にやや疑問符が付きます。
自社で内製化するにしても社会保険労務士に依頼するにしても、他のシステムに連携させる必要があることは想定しておいた方がよいと感じられます。
給与所得者異動届出書の電子申請が不可
給与所得者異動届出書の電子申請ができない点はfreee人事労務の最大の弱点であるように感じられます。
従業員が退職し、住民税の徴収方法を特別徴収から普通徴収に変更する場合等は、市区町村に給与所得者異動届出書を提出する必要があります。freee人事労務では、給与計算情報から給与所得者異動届出書を生成できますが、紙で出力することしかできません。freee申告で電子申請することもできません。
対応方法としては、電子申請できる他のシステムに給与計算情報を連携するか、紙ベースでの郵送になってしまいますが、いずれにしても煩雑です。
社会保険手続きの機能が不足しており他のシステムが必要になるのは、給与計算ソフトとしては一般的ですので特に欠点には見えませんが、給与所得者異動届出書は給与計算情報を使用する手続きで、どちらかと言うと給与計算手続きの一部としての性質が強いものになりますので、freee人事労務内で完結しないと不便さを感じる側面は否めません。
電子申請に対応している給与計算ソフトであればボタン一つで給与所得者異動届出書を生成して提出できるため、改善の必要性が高い箇所であるように感じられます。
代理人による電子申請が不可
いくつかの社会保険手続きについてe-govでの電子申請が可能となっています。但し、e-govでの手続きは代理人による申請に対応していません。代理人による申請に対応していないと、顧問社会保険労務士に忌避される原因となります。
社会保険労務士に委任する場合、代理申告となりますのでfreee人事労務だけでは申告ができません。社労士夢やオフィスステーションに連携するのが主流かと思いますが、オフィスステーションについては給与情報について公式アプリで連携できないので、離職証明書の発行が難しくなります。
freee申告に連携される法定調書、給与支払報告書、源泉徴収票等については、freee申告側で代理人によるe-tax、el-taxでの電子申請が可能です。
