2026年2月に実施された衆議院選挙において、自民党は食料品消費税ゼロ%を掲げて大勝しましたが、立法段階にきてレジ対応を理由に「1%」への減税を主張しています。「1%」に拘る理由を私見を含めて考察いたします。
2026年衆院選の党首討論では自民党は免税取引にする方向性と説明
党首討論における国民民主党への回答
2026年の衆院選にあたって実施された党首討論では、国民民主党から自民党へ、政策として掲げている食料品消費税ゼロ%は、免税取引を意味するのか、それとも非課税取引を意味するのか質問がなされました。自民党はその2択であれば免税取引が目指している方向に近しい旨の回答をしております。
国民民主党の質問の趣旨
国民民主党が免税取引か非課税取引を問うたのは、そのいずれかで経済に与える影響が大きく異なるからだと考えられます。しかし、消費税法独自の税区分の概念は世間一般に知られておらず、次に整理いたします。
免税取引と非課税取引の違い
免税取引は免税売上に対応する課税仕入れの仕入税額控除が可能
免税取引は、仕向地主義の考え方から説明されることが多くあります。消費税は財やサービス等が消費される国において課税するという国際的な慣行に基づくもので、生産地国と消費地国での二重課税を回避するための措置と言われております。
しかし、現行制度は仕向地主義から説明しきれない部分もあり、規範性のある書籍において「輸出取引等の国際競争力の強化のため」と説明していることもあります。
課税資産の譲渡等から除外されているのは非課税取引で、免税取引は課税資産の譲渡等に含まれるため、免税売上に対応する課税仕入れは仕入税額控除が可能です。
九 課税資産の譲渡等 資産の譲渡等のうち、第六条第一項の規定により消費税を課さないこととされるもの以外のものをいう。
消費税法 第2条1項9号
(非課税)
消費税法 第6条1項
第六条 国内において行われる資産の譲渡等のうち、別表第二に掲げるものには、消費税を課さない。
非課税取引は非課税売上に対応する課税仕入れの仕入税額控除がとれない
先に述べた通り非課税売上に対応する課税仕入れは、個別対応方式において仕入税額控除をとることができません。
イ 課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ、特定課税仕入れ及び課税貨物に係る課税仕入れ等の税額の合計額
消費税法 第30条2項1号より抜粋
ロ 課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れ、特定課税仕入れ及び課税貨物に係る課税仕入れ等の税額の合計額に課税売上割合を乗じて計算した金額
経済に与える影響の比較
非課税取引は非課税売上を計上する事業者が消費税を負担する

上図の通り、双方とも最終消費者から消費税を預かることができないという点においては共通しております。
しかし、免税取引は対応する課税仕入れに係る仕入税額控除が可能なため、最終消費者から消費税を預かることができないことによって消費税相当額に応じた販売価格の下落が生じても、仕入税額控除によりその補填がなされることになります。
一方、非課税取引は対応する課税仕入れに係る仕入税額控除がとれないため、非課税売上を計上する事業者が消費税を負担することになります。
非課税売上を計上する事業者は消費税の負担を販売価格に転嫁する
非課税売上を計上する事業者は、営利企業である以上(又は事業の継続性を確保するため)、負担する消費税を販売価格に転嫁することが想定されます。例えば、非課税売上が多い事業者の代表は医療機関ですが、国は医療機関が負担する消費税を考慮し、基本診療料などの点数を上乗せしているとされております。
つまり、非課税取引に該当する取引は、社会的配慮等の観点から消費税を非課税にすると謳われていはいますが、実際には販売価格に消費税相当額が転嫁されており、非課税という体裁になっているに過ぎないと考えられます。
食料品消費税ゼロ%と非課税取引の整合性
食料品取引を非課税取引にすると政策の意義に疑問符
このような実態に鑑みると、食料品取引を非課税取引にした場合には、結局消費税相当額が販売価格に転嫁される訳ですから、政策の意義に疑問符が付くことになります。そのため、国民民主党はこの論点について言及し、自民党は免税取引が目指している方向に近しい旨の回答をしたと考えられます。
仮に自民党が食料品消費税ゼロ%を前言の通りに免税取引と同様の扱いとした場合、現行の非課税取引との整合性が論点となり、広く国民的な議論になることが想定されます。
「非課税取引」についての議論の防止が目的?
先の見てきたとおり、消費税法は社会的配慮等の観点から非課税取引を設けていますが、非課税取引に該当しても最終消費者の負担は軽くなりません。
これを理由に食料品消費税ゼロ%を前言の通りに免税取引とすれば、現行制度の非課税取引という仕組みとの整合性が論点となり、実際には最終消費者への恩恵がない現行の非課税取引の仕組への批判とつながることは容易に想定できます。
軽減税率も非課税取引も主要な制度趣旨は社会的配慮ですから、なぜ食料品のみが仕入税額控除が可能な免税取引なのかが議論となり、形式と実態が乖離しうること、非課税取引とされるよりも軽減税率を適用される方が圧倒的に事業者にとっての恩恵が大きいという事実が周知されたと思われます。
これらの議論の展開を防ぐため、行政府はレジ対応を形式的な理由に挙げ、食料品消費税「1%」拘るっていると推察されます(※記事監修者の個人的な見解です)。
